なぜ年賀状をやめる人が増えたのか?「年賀状じまい」から考える現代の人間関係

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「今年から、年賀状をやめようと思っています」
最近、そんな知らせを受け取ることが増えていないでしょうか。
かつては、年末になると年賀状を書くのが当たり前でした。
親戚、友人、仕事関係の人、昔の同級生など、普段は会わない人にも年賀状を送り、新年のあいさつを交わす。
ところが現在、その習慣が大きく変わりつつあります。
「年賀状じまい」という言葉も、すっかり一般的になりました。
これは単なる年賀状の衰退なのでしょうか。
実は、年賀状じまいの背景には、現代の人間関係そのものが変化していることが見えてきます。
この記事では、年賀状をやめる人が増えた理由を整理しながら、「人とのつながり方は、これからどう変わっていくのか」を考えてみます。
- 1. 年賀状は、実際に大きく減っている
- 2. 「年賀状を出す人」は4割を下回った
- 3. なぜ年賀状をやめるのか?
- 4. 年賀状じまいは「人間関係の整理」でもある
- 5. 「人間関係を減らす」ことは、冷たいことなのか?
- 6. 「広くつながる」から「必要な人とつながる」へ
- 7. ただし、年賀状には「デジタルにはない価値」もある
- 8. 年賀状は「大量送信」から「特別な一枚」へ
- 9. 「年賀状じまい」は、人生の棚卸しでもある
- 10. ただし、「年賀状をやめれば人間関係が楽になる」とは限らない
- 11. 「つながり方」を自分で選ぶ時代になった
- 12. これからの人間関係は「量」より「質」へ
- 13. 年賀状じまいをするなら、「関係を切る」のではなく「形を変える」
- 14. 年賀状をやめるか迷ったら、3つに分けて考える
- 15. 「年賀状じまい」は、人間関係を考え直すきっかけ
- 16. まとめ――年賀状が減っているのではなく、人間関係の形が変わっている
年賀状は、実際に大きく減っている
まず、感覚だけではなく数字を見てみましょう。
日本郵便によると、2025年用年賀はがきの総発行枚数は約10億8115万枚でした。ところが2026年用は約7億8500万枚まで減少しています。
さらに、2026年用の当初発行枚数は約7億4841万枚で、2025年用の約10億7000万枚から約3割減りました。
年賀状のピークは2004年ごろで、約44億枚規模でした。
つまり現在の年賀状は、ピーク時と比べて大幅に縮小しています。
これは一時的なブームの変化というより、かなり長期的な社会変化と考えたほうがよいでしょう。
「年賀状を出す人」は4割を下回った
2026年のPILOTの調査でも、ビジネスパーソンの年賀状を出す割合は減少傾向にあり、ついに4割を下回りました。
一方で、「年賀状は必要だ」と考える人も半数を割り込んでいます。
ここから見えてくるのは、
「年賀状を出すのが当たり前」という社会的な前提が崩れてきた
ということです。
昔は、
「年賀状を出さないと失礼ではないか」
という意識がありました。
しかし現在では、
「年賀状を出さなくても、人間関係が壊れるわけではない」
という考え方が広がっています。
これはかなり大きな変化です。
なぜ年賀状をやめるのか?
では、人々はなぜ年賀状をやめるのでしょうか。
2025年の年賀状に関する調査では、年賀状を出さない理由として、
- LINEなどのメッセージアプリで代用する
- 準備が面倒
- 年賀状を書く必要性を感じない
- 人間関係を整理したい
- 郵便料金などのコストがかかる
といった理由が挙げられています。
特に重要なのは、
「お金がかかるから」だけではない
という点です。
年賀状をやめる理由の中心には、
「時間がかかる」
「準備が面倒」
「SNSで十分」
という感覚があります。
つまり、現代人にとって年賀状は、金銭的負担だけでなく、時間と人間関係にかかる負担として捉えられるようになったのです。
年賀状じまいは「人間関係の整理」でもある
年賀状には、独特の人間関係があります。
「去年も届いたから、今年も送らなければ」
「相手から来たのに、返さないのは失礼だ」
「もう何年も会っていないけれど、住所録には残っている」
こうした関係を、一つずつ維持していかなければなりません。
しかし、年齢を重ねると、人間関係も変わっていきます。
仕事を退職する。
子どもが独立する。
引っ越す。
昔の友人とは連絡を取らなくなる。
一方で、新しい人間関係が生まれることもあります。
その結果、
「昔から続いているから」という理由だけで、すべての関係を維持する必要があるのだろうか
という疑問が出てきます。
年賀状じまいは、この疑問に対する一つの答えなのかもしれません。
「人間関係を減らす」ことは、冷たいことなのか?
ここは少し考えてみたいところです。
年賀状じまいをすると、
「人とのつながりを大切にしなくなった」
「人付き合いが冷たくなった」
と思う人もいるでしょう。
しかし、必ずしもそうとは限りません。
むしろ逆の場合があります。
たくさんの人に形式的な年賀状を送るよりも、
本当に大切な人に、必要なときにきちんと連絡する。
こちらのほうが、人間関係としては濃い場合があります。
年賀状という「形式」を減らすことで、かえって「本当に大切な関係」が見えやすくなることもあるのです。
「広くつながる」から「必要な人とつながる」へ
昔の人間関係には、
「できるだけ多くの人とつながっておく」
という価値観がありました。
年賀状は、その象徴の一つだったとも考えられます。
住所録にたくさんの名前がある。
毎年、何十枚、何百枚もの年賀状を送る。
これが「人付き合いの広さ」を表していた時代もありました。
しかし、SNSやスマートフォンが普及した現在では、事情が違います。
連絡しようと思えば、いつでも連絡できます。
写真も送れる。
近況も伝えられる。
電話もできる。
オンラインで顔を見ながら話すこともできます。
そのため、
「年に一度、はがきを送らなければ関係が維持できない」
という必要性が薄れてきました。
ただし、年賀状には「デジタルにはない価値」もある
ここで、年賀状を完全に否定する必要はありません。
むしろ、年賀状が減っているからこそ、その価値が見直される可能性があります。
PILOTの2026年調査では、年賀状を出す人は減っている一方、年賀状をもらうとうれしいと感じる人は多く、特に手書きのコメントがある年賀状に価値を感じる傾向が示されています。
これは興味深い現象です。
「自分からは出さない」
けれど、
「もらうとうれしい」
という人がいるのです。
つまり、年賀状そのものが不要になったというより、
「義務として大量に送る年賀状」が不要になってきた
と考えたほうが実態に近いのかもしれません。
年賀状は「大量送信」から「特別な一枚」へ
これからの年賀状は、すべての知人に一斉に送るものではなく、
- 本当に大切な友人
- 遠くに住む家族
- 長年付き合いのある恩師
- 普段なかなか会えない人
- 手書きのメッセージを届けたい人
など、限られた相手に送るものへ変化していく可能性があります。
つまり、
年賀状の「量」は減っても、「意味」は残る
ということです。
これは、文化が消えるというより、文化の使われ方が変わる現象とも考えられます。
「年賀状じまい」は、人生の棚卸しでもある
特に50代、60代以降になると、年賀状じまいには別の意味も出てきます。
それは、
人生の人間関係を一度整理する
ということです。
これまで付き合ってきた人を、
「これからも関係を続けたい人」
「年に一度くらいは連絡を取りたい人」
「しばらく連絡を取っていない人」
「もう無理に関係を維持しなくてもよい人」
というように、自然に整理していく。
これは必ずしも人を切り捨てることではありません。
自分の人生に残したい関係を、改めて考える作業です。
年賀状じまいは、いわば人間関係の断捨離とも言えるでしょう。
ただし、「年賀状をやめれば人間関係が楽になる」とは限らない
ここには注意も必要です。
年賀状をやめること自体が目的になってしまうと、
「面倒だから全部やめよう」
となってしまうことがあります。
しかし、人間関係は「減らせばよい」という単純なものではありません。
年賀状をやめても、孤独になってしまえば意味がありません。
むしろ大切なのは、
形式的なつながりを減らした分、本当に大切なつながりをどう維持するか
です。
たとえば、
年賀状をやめる代わりに、
「年に一度、電話する」
「LINEで近況を伝える」
「誕生日に連絡する」
「数年に一度、一緒に食事する」
など、自分に合った方法を選ぶことができます。
「つながり方」を自分で選ぶ時代になった
以前は、人間関係にはある程度決まった型がありました。
年賀状を送る。
お中元・お歳暮を贈る。
冠婚葬祭には参加する。
電話をする。
地域の行事に参加する。
しかし現在では、そのすべてを同じように維持する必要はなくなっています。
LINE、メール、SNS、電話、オンライン会議、食事、旅行など、つながり方は非常に多様になりました。
だからこそ、
「どの形式を守るか」より、「誰と、どのようにつながりたいか」
が重要になってきます。
これからの人間関係は「量」より「質」へ
年賀状の減少から見えてくるのは、日本人が人付き合いを嫌いになったということではありません。
むしろ、
「意味のない形式を減らして、本当に意味のある関係に時間を使いたい」
という価値観の広がりではないでしょうか。
企業の世界でも年賀状じまいは進んでいます。
2026年の年賀状について東京商工リサーチが企業を調査したところ、「出さない」と回答した企業は64.0%でした。理由として「必要性を感じない」「業務量が増える」「ペーパーレス化」などが挙げられています。
個人だけでなく企業でも、
「昔からやっているから続ける」
という考え方が見直されています。
これは、社会全体が「慣習」から「必要性」へと判断基準を変えているとも言えます。
年賀状じまいをするなら、「関係を切る」のではなく「形を変える」
もし年賀状をやめようと思ったら、
「もう誰とも付き合いません」
という意味にする必要はありません。
たとえば、
「長年、年賀状をありがとうございました。今年を一区切りとして、年賀状でのご挨拶を終了させていただきます。これからも変わらぬお付き合いをいただければ幸いです。」
というように、
年賀状という習慣を終えることと、人間関係を終えることを分けて考える
ことが大切です。
これなら相手にも意図が伝わります。
年賀状をやめるか迷ったら、3つに分けて考える
「年賀状をやめたいけれど、誰にどうすればいいかわからない」という場合は、次のように整理すると簡単です。
① これからも大切にしたい人
年賀状を続けてもいいでしょう。
ただし、枚数を減らして「本当に送りたい人だけ」にする方法もあります。
② 連絡手段を変えればよい人
LINE、メール、電話などに切り替えます。
「今年から年賀状ではなく、LINEでご挨拶します」と伝えておくのも一つの方法です。
③ もう無理に関係を維持しなくてもよい人
年賀状じまいを機会に、自然にやり取りを終了してもよいでしょう。
人間関係は、すべてを永遠に維持する必要はありません。
「年賀状じまい」は、人間関係を考え直すきっかけ
年賀状が減っていることを、
「日本の伝統が失われている」
と見ることもできます。
実際、年賀状を必要だと考える人の中には、「日本の伝統・文化が衰退する」ことを心配する人もいます。
一方で、
「準備の手間を減らしたい」
「SNSなどで代用できる」
「人間関係について悩まなくて済む」
という理由から、年賀状を不要と考える人もいます。
どちらが正しいという話ではありません。
大切なのは、
「昔から続いているから」という理由だけで続けるのではなく、自分にとって本当に必要なものなのかを考えること
です。
まとめ――年賀状が減っているのではなく、人間関係の形が変わっている
年賀状じまいの広がりは、日本人が人付き合いをしなくなったことを意味しているわけではありません。
むしろ、
「広く浅くつながる」
から、
「大切な人と、自分に合った方法でつながる」
という方向へ、人間関係の形が変化していると考えられます。
年賀状という一つの習慣が小さくなっていく一方で、
LINEで連絡する。
電話で話す。
一緒に食事をする。
写真を送り合う。
直接会う。
そうした別のコミュニケーションが増えています。
そして、年賀状そのものも完全になくなるのではなく、「義務として大量に送るもの」から「大切な人へ気持ちを届ける特別なもの」へ変化していく可能性があります。
年賀状を続けるのも、やめるのも自由です。
重要なのは、
「年賀状を出しているか」ではなく、「自分は誰とのつながりを大切にしたいのか」
ではないでしょうか。
年賀状じまいは、単なる郵便習慣の終了ではありません。
それは、自分の人生における人間関係を、一度ゆっくり見直す機会なのかもしれません。


